
経済的に厳しい状況にある家庭の子どもたちへ、無償でメガネを提供する活動が広がりを見せています。
公的な支援が十分でない現状を受け、民間の団体が独自に支援策を立ち上げているそうです。
子どもの視力は学習に直結します。経済的に購入が難しい家庭の子どもには支援が必要でしょう。
(※2025年9月28日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
視力の悩みに寄り添うメガネ支援の輪とは
「よく見えるようになって、本人もとても喜んでいます」と話すのは、兵庫県明石市に住む53歳の女性です。
彼女の12歳の長男は、中学1年の2学期に新しいメガネを手にしました。
長男は小学校1年の時に弱視と診断されました。
弱視や斜視などの治療に使われる「治療用メガネ」には保険が適用され、自治体の医療費助成も利用可能ですが、その対象年齢は9歳未満に限られています。
女性は7年前に離婚し、家計の負担は大きく、補助がない状況でのメガネ購入は容易ではありませんでした。
長男の左目の視力は0.2で、中学ではテニス部に所属し、学業と部活動の両方に対応できるメガネが必要だと考えていました。
そんなとき、彼女が関わっていたひとり親家庭を支援する団体が取り組むプロジェクトを知りました。
一方、同じく兵庫県西宮市に住む53歳の女性も、大学1年の長女(19歳)の視力に関する悩みを抱えていました。
長女が中学1年のとき、視力が0.1未満であることが判明し、「実は小学生の頃から黒板が見えづらかった」と後に打ち明けられました。
この女性も離婚後、経済的な困難を抱えており、通常の近視用メガネの購入は大きな負担でした。
一部の自治体では就学援助制度を通じてメガネ代の補助を行っていますが、それは限られた地域のみです。
「娘が視力のことを言い出せなかったのは、私のせいかもしれない」と彼女は悔やんでいます。
今回、娘が高校を卒業する前に支援の案内を受け、ようやく支援を受けることができました。
この支援は、参加している民間団体が家庭の状況や必要性を把握したうえで、対象となる高校生までの子どもに対して提供されます。
支援金額の上限は1人につき\20,000で、全国展開するメガネ店「パリミキ」(本社:東京)と地域の協力企業がそれぞれ費用の50%を負担しています。メガネは全国の同店で購入する仕組みです。
メガネは「お下がり」が難しい・・・支援が広がる子どもたちの視力支援
この支援活動は、今年1月より本格的にスタートしました。
現在、北関東(例:水戸市)をはじめ、愛知県、香川県、徳島県、京都市、北九州市、福岡市などで実施されています。
また、10月からは東京都と山口県でも取り組みが始まる予定です。
兵庫県では、神戸市に本社を置く産業用ポンプメーカー「兵神装備」が協力企業として加わり、県内で子どもや女性をサポートしている4つの団体が、継続的なつながりのある家庭へ声がけを行っています。
西宮市にあるNPO法人「こどもサポートステーション・たねとしずく」には、8月までに16人から申し込みがありました。
代表理事の大和陽子さんは、「メガネは服と違って、兄弟や他の人から譲ってもらうことが難しいものです。我慢していた子どもが、自分に合うものを選ぶ経験を通して、理想の自分に一歩近づいているように感じます」と話しています。
この支援構想を発案したのは、神戸市に拠点を置く一般社団法人「ソーシャルビジネスバンク」の東信吾さん(51歳)です。
彼は長年、金融機関に勤め、「プライベートバンカー」として富裕層の資産管理を担当してきました。
ある日、大塚製薬の創業家出身で「チャイルドライフサポートとくしま」の理事長を務める大塚芳紘さんと食事をしていた際、「経済的に困難な家庭の子どもがメガネを手に入れられずに困っている」との話を聞き、支援の必要性を感じたといいます。
そのとき、東さんはかつての同僚がメガネチェーン「パリミキ」に勤務していたことを思い出し、同社ホールディングス会長の多根幹雄さんと大塚さんを引き合わせました。
視力の問題が学力や自己肯定感に深く関わると考える両者は、費用を出し合い、2023年7月から徳島県内の支援団体を通じてメガネ提供の活動を開始しました。
「裕福な方々が、幸福の形をお金以外にも見いだすとき、寄付という選択肢を考えてもらえたら」と東さんは願っています。なお、彼自身はこの活動に報酬を受け取らず、無償で取り組んでいるそうです。
子どもの視力を守りたい!メガネ購入への公的支援の現状
小・中学生を対象に、学用品や給食費などを支援する「就学援助制度」は、生活保護を受けていない低所得世帯に対して、各自治体が独自に実施内容を決定しています。
文部科学省が昨年度に行った調査によると、「メガネの支援」を項目として挙げた自治体は、全国で約20カ所にとどまっていました。
その中でも、横浜市では2004年度から視力矯正用メガネの購入に対する補助制度を導入しています。
2023年度には、生活保護を除く約2万8千人の就学援助受給者のうち、約1,220人(全体の4.3%)がこの支援を利用しました。
一方で、生活保護を受けている世帯については、医療扶助によりメガネの購入が可能となっています。
