問われる保育の質。慢性的な人手不足の解消はいつ?

静岡県で起きた保育士3名による園児ての暴行事件。もちろん許されることではありませんが、これは保育現場の過酷さと人手不足を象徴するような事件だったのではないでしょうか。
もと保育士の3名は処分保留で釈放されましたが、今後も任意で捜査を続ける、と静岡地検沼津支部は表明しています。
保育の現場で働く人からは「3人の行為は言語道断だが、気持ちは分からなくもない」との声も聞かれます。
とにもかくにも保育現場の人手不足が一因になっていることは明らかです。
3人は「業務が忙しく、余裕が無かった」と説明しているとのことです。

この20年ほどでどんどん厳しくなった保育現場の労働環境

中央大学で労働社会学が専門の小尾春美教授は、「虐待などの問題を安易に労働環境と結びつけることはできない」としながら、この20年ほどで保育現場の労働環境は厳しくなり、保育の質が下がる要因になっている、と語っています。

元々は2000年代、共働きが増え、保育園に入れない待機児童の数が社会問題になりました。政府は当初、規制を緩めて、園児を定員以上受け入れることで解決を図りました。となると当然、園児も広さも余裕のない現場が生まれてきます。

また、大幅に規制を緩和したことで、企業主導型保育所など園の増設が急速に増え、現場で保育士の争奪戦が起こりました。となると当然慢性的な人手不足がおき、激務が離職を招く悪循環が起こります。

子どもを預かる時間も長くなっており、11時間以上明けている認可保育園は2020年では全体の8割にも及びます。そうなると1人8時間の保育時間では足りません。
となるとパートなどの非正規職員が増えます。働く時間帯もバラバラになり、保育方針や情報伝達もしづらくなってきました。
結果、ベテランと若手をバランスよく配置できなくなり、人材育成もななまらなくなってしまいました。

「安定的な財源が必要」と保育士基準の見直しは何度も先送りに。。。

国は、4,5歳児クラスの保育士基準を手厚くするための補助金を来年度の予算に盛り込む、と明らかにしました。
国の配置基準では4,5歳児は保育士1人で30人を見てよいことになっていますが、1人で25人以上を見る大規模保育園への補助金を加算する方針のようです。
この案は、安定的な財源が必要とされ、今年は先送りされたものです。
また、大規模保育園のみへの補助金のため、人手不足解消には限定的な効果しかないのでは、という見方もあります。

「事故を起こさなければいい」でない!子どもの成長を受け止められる現場に

政府の対応は、事件や事故が起きたところだけ、場当たり的に手当をしているようにしか見えません。

単に「事故をおこさなければいい」ではありません。子ども成長をしっかり受け止め、保育士は自信も仕事に誇りを持ち、お互いを尊重できる保育を目指してほしいだけで、何も贅沢は望んでいません。

これが昨今はとtめお贅沢なことになってしまっているのでしょうか。
子どもは社会全体で育てる、という目線がまだまだ足りないと感じてしまいます。

2022年12月27日(火)朝日新聞朝刊より出典・引用しています。