新年度の予算案は、例年2月ごろに全国の自治体から公表されます。
佐賀県が発表した予算案には、ひらがなを交えた新たな取り組みが盛り込まれていました。
【7さいめせんのこうつうあんぜん推進事業】
(※2025年2月25日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
「魔の7歳」と呼ばれる理由とは
6~7歳は、小学校への入学を迎え、自ら歩いて行動する場面が増える時期です。
交通事故総合分析センターのデータによりますと、2023年に全国で発生した歩行中の死傷者数を80歳以下で年齢別に比較したところ、最も多かったのは75歳の731人、次いで7歳の716人となっています。
このように7歳の事故件数が非常に多いことから、「魔の7歳」と呼ばれることがあるのです。
7歳の視点で道路を見直す佐賀県の新たな取り組み
佐賀県内では、2019年から2023年にかけて歩行中の交通事故により死傷した1,412人のうち、年齢別で最も多かったのは7歳の34人でした。
これを受け、佐賀県では7歳児の目線を活用し、道路の安全性を確認するためのマニュアル作成に取り組む新たな事業を開始する予定です。
小さな気づきが生んだ道路安全への新たな一歩
道路を渡る際の左右確認が、塀や植栽によって妨げられるケースがあります。
このたびの事業は、ある職員の気づきからスタートしました。
2022年秋ごろ、県道路課で道路整備を担当している三瀬志帆美さん(36)は、翌春に小学校へ入学予定だった長男と、学校まで約500メートルの道のりを一緒に歩くようになりました。
これは通学の練習だけでなく、7歳の子どもの事故が多いと紹介されていた雑誌記事を目にし、自主的に道路状況を確認する目的も兼ねていたそうです。
子どもの視点が教えてくれた道路の危険
三瀬さんの長男は、住宅街にある信号機のない交差点で、歩道からかなり前に出て左右を確認していました。
「どうしてだろう」と不思議に思い、子どもの目線で確認してみることにしました。
しゃがんで視線を低くすると、大人なら見える右側の道路が、子どもからは塀に遮られて見えないことに気づいたのです。
また、「止まれ」の標識も、子どもの高さからでは上を見上げなければ認識しづらい状況でした。
息子の目線で観察することで、道路に潜むさまざまな危険が見えてきました。
子どもの目線から始まった道路点検の革新
ちょうどその時期、県庁では職員が自由に業務提案を行う企画が行われていました。
三瀬さんは「道路の点検時に、子どもの目線に合わせてしゃがんでみてはどうでしょう」と提案しました。
このアイデアはすぐに県内の市町にも共有され、同年11月には実際に三瀬さんの提案を取り入れた点検活動が始まり、県内各地へと広がっていきました。
子どもの目線による点検は実際に効果を上げています。
佐賀市内のある道路では、低い視点から見ると植栽によって接近する車が見えづらいことが判明し、植栽が撤去されました。
現在、県では子どもの視点を活かした点検をさらに普及させるため、統一マニュアルの作成を進めています。
子どもの特性に寄り添った安全な道路づくり
小さな子どもは、道路脇の側溝をのぞき込んだり、興味を引かれるものがあると衝動的に飛び出したりすることがあります。
新たな事業では、こうした子ども特有の行動を考慮し、モデル地区において子どもの専門家とともに危険箇所を点検し、その結果をマニュアル作成に活かす方針です。
この取り組みのために、予算案では753万円が計上されました。
2023年春から交通安全を担当している三瀬さんは、「怖がらず、楽しく歩ける道路になることを願っています」と、子どもたちの安全な未来に思いを寄せています。