ヒーローはなんと30歳!令和のウルトラマンシリーズは時代を映し出す鏡?

7月8日に放送が始まった新しいウルトラマンシリーズ「ウルトラマンブレーザー」。
なんとウルトラマンに変身する主人公が30歳の妻子持ちということで話題になっています。
これからの絵本やおもちゃに影響がでてくるかもしれません。

全体的に年齢が高め設定、親世代を意識

ウルトラマンシリーズだけではなく、他の子ども向け番組も主要キャラクターが年齢が高めの設定になっているそうです。
その背景には、現代の大人と子どもの関係性に変化が影響しているとか。
ウルトラマンブレーザーの主人公、ヒルマ・ゲントは30歳で同じ年の妻がおり、7歳の息子もいます。

そのストーリーはこんな↓
都心に怪獣が襲来、主人公の任務は「若手隊員を無事に帰還させること」と冷静に諭します。様々な作戦変更に振り回されながらも、「どうしますか隊長?」と決断を迫られる・・・

放送開始は1966年。当時は主人公は地球防衛チームの若手隊員で、正義感に満ち溢れ、上層部にも物おじせず発言する・・・実際に会社内にいたらちょっと煙たがられる存在かもしれませんね。
今回は若手隊員ではなく、隊長が主人公。部下をまとめ、上司の様子もうかがわなくてはいけません。

今回の作品のテーマは「コミュニケーション」

コロナ禍を経て、人々の暮らし方は大きく変わりました。ウクライナ情勢も混乱を極めています。未曽有の災害も増えました。
この作品の田口清隆監督は、がむしゃらなルーキーよりも、中間管理職的な立場の隊長が求められるのでは、と感じたそうです。上司と部下、家族、様々な板挟みに合うストーリーを作りたかったそうです。

アンケート「大人になったらなりたいもの」も後押し

1989年から第一生命保険が子ども達にたずねている「大人になったらなりたいもの」。
以前は小学生男子は「サッカー選手」「野球選手」「学者」が上位の定番だったそうです。しかし、2020年に初めて「会社員」が1位になりました。
コロナ禍で親が在宅勤務をするケースが増え、働く親の姿を目にする機会が増えたことが影響している、とのことです。
田口監督は「今の時代、親世代に近い年齢の主人公を、かっこいい、と思ってくれるかもしれない」と考えたそうです。

変化する戦隊ヒーロー、プリキュアも同様

2023年2月まで放送されていた戦隊シリーズ「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」のメンバーで、キジブラザーは33歳の妻帯者である冴えない会社員という設定でした。
現在放映されている「ひろがるスカイ!プリキュア」では今まで登場人物は中学2年生がほとんどでしたが、18歳の専門学校生、キュアバタフライが登場しています。
男の子メンバーの「翼(キュアウイング)」も話題になりました。

サブカル全盛期を過ごした世代が大人になり、子どもの意識が変わった

かつてのアニメや漫画などは親や学校を否定的に見ている物が多く、若者の対抗心が描かれているものが多かったそうです。組織で動く大人との違いが際立っていました。
しかし今は親や教師は否定する対象ではなく、一緒に盛り上がれる仲間に変わりました。
最近は反抗期がない子どもは増えているとのこと。上の世代に反抗する必要がなくなったのです。
ですから、危機に立ち向かうのは経験を積んだ大人方が子どもに対して説得力があるのでしょう。
それに準じて、おもちゃや絵本も変わってくるのでしょう。本当に時代を映す鏡ですね。

2023年7月10日(土)朝日新聞朝刊より出典・引用しています。