日本各地の認可保育施設において、子どもが重大なけがを負うケースが増加しており、2021年の発生率は2017年の約2倍に達していることが、京都大学と東京大学の研究グループによる調査で明らかになりました。一方で、新型コロナウイルスの流行による影響は認められませんでした。
(※2024年9月26日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
認可保育施設での事故増加の実態とその背景
内閣府などが公表した2017年から2021年にかけての全国統計データを詳細に分析しました。その結果、この期間中、保育施設の数は3万2,793施設から18%増加し、3万8,666施設に達しました。また、利用者数も約280万人から9%増加し、約306万人に上りました。
2021年における保育施設内での子どもの重大なけがの件数は1,784件にのぼり、その内訳では骨折が856件、「歯や歯ぐきのけが」が108件と多くを占めていました。年間の発生率は10万人あたり58.3件で、これは2017年の約2倍にあたります。
なお、同期間には新型コロナウイルスの流行がありましたが、月ごとの発生率を調査したところ、パンデミック前からすでに増加傾向が見られており、流行の直接的な影響は確認されませんでした。
保育施設での安全向上に向けた課題と提言
研究チームは今後、保育施設の職員への聞き取り調査などを実施し、重傷事故が増加している背景についての解明を進める予定です。
しかしながら、今回の調査では、国や自治体の基準を満たさず補助金の対象外となる認可外保育施設については、必要なデータが十分に収集できず、分析に含まれていません。
研究チームの片岡祥子・京都大学客員研究員は、「認可外施設も含めた保育現場の現状に基づいたデータを体系的に整理することが重要です。継続的な監視や安全性向上の取り組みを進めるためにも、国の政策として保育施設の状況や事故に関する情報を標準化することが求められます」と述べています。
保育施設の安全性向上に向けた社会的議論の必要性
研究チームの中山健夫・京都大学教授(健康情報学)は、「子どもたちの安全性が重要な課題であることを改めて認識しました。新型コロナウイルスの流行中も事故が増加していた点については特に懸念しています」と述べています。
さらに、「今回の研究では重傷事故のみを対象としましたが、その前段階にあたる軽度の事故についても実態を把握することが必要です。責任を追及するのではなく、再発防止に向けた現実的な議論が求められます。この問題を社会全体の課題として捉え、多くの方に保育施設の安全性や事故発生の背景、そして改善策について関心を寄せていただければと思います」と提言しました。
なお、研究成果は日本小児科学会の英文学会誌に掲載されています
(https://doi.org/10.1111/ped.15782)