子どもの行動の「背景」を探る-アセスメント態勢の必要性

 

2030年度の導入が見込まれている次期学習指導要領では、「多様性の包摂」が重要なテーマとして検討が進められています。
さまざまな特性をもつ子どもたちの学びを支えるために何が求められるのかについて、米国ニューヨーク州で学校心理士として活動し、早稲田大学でも教鞭を執るバーンズ亀山静子氏に話を伺いました。
(※2025年11月23日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

子どもの背景を読み解くアセスメントの重要性

日本の教育現場において課題とされているのが、子どもの行動の背景要因を丁寧に分析するアセスメント体制の不足です。
例えば、私が勤務する米国ニューヨーク州の学校では、「トラブルが多い」「学習が思うように進まない」といった相談が教員や保護者から寄せられた場合、まず保護者の同意を得たうえで、専門スタッフが評価を実施します。
その結果をもとに、60日以内に具体的な教育方針が策定されます。
行動面に関する問題であっても、その背景に学習上の困難が潜んでいるケースは少なくありません。

多角的な評価と責任ある教育支援の仕組み

医療面での検査に加え、心理的・教育的な観点からも複数の評価が行われます。
子どもの成長過程を振り返りながら、家族や担任、個別指導に関わる教員などから丁寧に情報を集め、実際の教室での様子も確認します。
こうした多面的な視点を踏まえ、保護者も参加する場で総合的に検討が行われます。
そのうえで、個々の子どもに応じた目標設定やカリキュラム、学級の在り方、必要な支援内容を具体的に計画し、保護者の同意を得て進めていきます。
特に重視されているのが「評価」の考え方です。
目標に到達できなかった場合、その要因を子ども本人に帰するのではなく、適切な支援や指導が提供されていたかという観点で学校側の責任が問われます。
そのため、常にその子に合った教育が行われているかを継続的に見直す姿勢が求められています。

日本の教育現場における課題と柔軟な視点の必要性

日本では、教員やスクールカウンセラーの個々の経験や学びに依存した対応が中心となる傾向があります。
例えば、面談技法を学んだ結果、学校でも一律に個室での面談にこだわるケースも見受けられます。
しかし、子どもの中には周囲の関心を引くために問題行動を繰り返す場合もあり、集団の中での様子を観察しなければ適切な理解にはつながりません。
そのため、場面に応じた柔軟な対応が求められます。
また、日本の学校には、教員以外の専門職が教室に関わることを避ける風土が残っている点も課題として挙げられます。

専門人材の育成と教育体制の見直しの必要性

米国では、スクールサイコロジストやスクールカウンセラーといった専門職ごとに、大学院で体系的な養成プログラムが整備されており、それらを修了することで資格が取得できます。
日本においても、心理や福祉の知見と学校教育を連携させた専門的な人材育成の仕組みが求められます。
また、アセスメント体制の充実や大学での教育内容の見直しが進まなければ、学校に適応できずに大人になっても社会参加が難しくなるケースや、保護者からの不満・苦情が減らない状況が続く可能性があると考えられます。