子ども時代から育もう「ネットの嘘を見抜く力」

インターネットでは誤った情報が広まりやすく、それが社会に深刻な影響を与える危険性が高まっています。
学校の授業をはじめ、子どもたちがネットを通じて情報を調べる機会も増えており、正確な内容を見極める力を育てるための教育活動が進められています。
(※2025年5月28日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

子どもと育む「ネット検索力」先生の指導が鍵に

5月中旬、埼玉県戸田市にある市立美女木小学校の5年生が、インターネット検索の仕方を学ぶ授業を受けました。
「ドラえもんの画像を探してみましょう」
講師を務めたインフォハント代表の安藤未希さんが呼びかけると、児童たちは1人1台ずつ配られたパソコンを操作し、30秒ほどで画像を見つけ出しました。
なぜその画像を本物と考えたのか尋ねると、「テレビ朝日の公式サイトだから信用できそう」といった答えが返ってきました。
続いて出された課題は「カモノハシの赤ちゃん」でした。
先ほどのドラえもんの時はほとんどの児童が同じ画像を選びましたが、今回は結果が分かれました。
安藤さんが「どんな言葉を入れて調べたの?」と質問すると、「カモノハシ」「赤ちゃん」「本物」と入力した児童が複数いました。
ところが実際にその語で検索すると、上位には偽物の写真が表示されました。
注意書きに「本物ではありません」とあったことが原因でした。
安藤さんは「本物なら、わざわざ『これは本物です』とは書かないよね」と説明し、児童たちは納得していました。

安藤さんは全国の小中学校や高校で情報リテラシーに関する授業を行っています。
美女木小では2年前から5、6年生を対象に、年5回ほど継続的に授業を実施し、検索の仕組みや偽情報の危うさ、発信者の意図などを扱っています。
「1回きりの講演では力を十分につけることは難しい」と安藤さんは語ります。
5年生の担任、才田恵理子教諭はその意義を強く感じています。
以前は児童が検索した情報を単にコピーして提出するだけで、授業に歯がゆさを覚えていたそうです。
「正しいかどうかを自分で確かめて判断できる力を育てたい」と話します。
また、田野正毅校長は児童の成長を実感しています。
昨年は「カモノハシの赤ちゃん」の課題で「野生」や「動物園」といった言葉を加えて検索する児童は少なかったのですが、今年はそうした工夫が見られるようになりました。
「先生の指示に従うだけではなく、自分で考えて調べられるようになってきています」と語ります。
安藤さんは「子どもたちと日々接する先生の影響は大きく、先生がどう伝えるかが重要です」と強調します。
今年からは、教員と協力して授業を組み立てているそうです。

偽情報に惑わされない力を!大人にも求められる対応とは

正しい情報を見極める力は、子どもだけでなく大人にとっても重要な課題となっています。
総務省が全国の15歳以上の男女2820人を対象に行った調査では、実際に広まった誤情報や偽情報について、47.7%の人が「正しい」あるいは「おそらく正しい」と受け止めていたことがわかりました。
総務省は、こうした問題に対応するためリテラシー講座用の教材を作成し、一般に公開しています。
対象は中学生以上で、今年2月に改訂された第2版では、生成AI(人工知能)による虚偽の事例も取り上げられました。
そこでは、だまされないための心得として、
①情報源を確認する、
②専門家が本物かを確かめる、
③他の媒体での扱いを見る、
④画像がAI生成や盗用でないか確認する、
の4点が示されています。
また、SNS事業者も利用者のリテラシー向上や偽情報拡散の防止に取り組んでいます。総務省の啓発サイト「デジタル・ポジティブ・アクション」(https://www.soumu.go.jp/dpa/)では、企業や業界団体による活動事例が紹介されています。ぜひ参考にしてみてください。