
毎日の食事で「何を食べるか」だけでなく、「何から食べるか」にも注目した研究があります。
東京科学大学の調査では、野菜から食べる習慣と、子どもの自己肯定感やレジリエンスとの関連が示されました。
身近な食卓からできる食育について考えます。
(※2026年5月4日の朝日新聞の記事を参考にしています)
「ベジ・ファースト」と子どもの心の関係
東京科学大学の研究グループは、東京都足立区の小学生約2600人を対象に、野菜を最初に食べる習慣と心の状態との関係を調べました。
足立区では、将来の糖尿病予防を目的として、10年以上前から「ひと口目は野菜から」という取り組みを進めています。
研究では、2015年に小学1年生だった2654人を6年生まで追跡し、野菜から食べる習慣の変化によって4つのグループに分けました。
その結果、6年間継続して野菜を最初に食べていた子どもは、習慣が全くなかった子どもに比べ、困難から立ち直る力である「レジリエンス」と、自分を大切に思う「自己肯定感」が明確に高かったといいます。
食べる順番と心の状態に関連が見られたことは、意外に感じる人も多いのではないでしょうか。
6年間続けた子どもに見られた特徴
6年間にわたって野菜から食べる習慣があった子どもは全体の6.6%で、全く習慣がなかった子どもは55.8%でした。
また、野菜を先に食べる頻度が増えた子どもは31.7%で、このグループでもレジリエンスや自己肯定感が少し高い傾向が確認されました。
調査では、性別や世帯年収、子どもの肥満度、野菜を食べる頻度、もともとの心の状態などの影響を除いて分析しています。
研究グループのユパー・キン特任助教は、家庭や学校で少し意識すれば実践できる取り組みだとしています。
子育てでは新しい習慣を始めるだけでも大変なことがありますが、「最初のひと口を野菜にする」という方法なら、特別な道具を用意せず試しやすそうだと感じます。
なぜ自己肯定感につながるのかは研究途中
ただし、野菜を先に食べるとなぜレジリエンスや自己肯定感が高くなるのか、その詳しい仕組みはまだ分かっていません。
藤原武男教授は、好きな食べ物からではなく、まず野菜を食べるという「ちょっとした我慢」を積み重ねることで、自分の心をコントロールする力が育っている可能性も考えられるとしています。
研究成果は小児科学の専門誌に掲載されました。
ここで注意したいのは、「野菜から食べれば必ず自己肯定感が高くなる」と決めつけることではないでしょう。
研究で関連が示されたからこそ、今後どのような仕組みが関係しているのかを見ていく必要があります。
子どもが野菜を苦手としている場合、無理に食べさせて食事そのものを嫌な時間にしてしまうのも避けたいところです。
食卓を身近な「学びの場」に
食育というと、栄養素について勉強したり、料理を体験したりするイメージがあります。
しかし今回の研究を見ると、毎日の食事の順番を意識することも、子どもが自分の行動について考える一つの機会になるのかもしれません。
「今日は何から食べる?」と親子で話したり、野菜をひと口食べられたことを一緒に喜んだりするだけでも、食事への関心を持つきっかけになりそうです。
知育玩具のような特別な教材だけでなく、日々の食卓にも子どもが考え、選び、習慣を身につける場面があります。
研究で示された結果を一つのヒントとして、無理のない範囲で親子の食事に取り入れてみるのもよいのではないでしょうか。
